今、ワークショップでは、C調曲を多めにとりあげている。
 まず、按指法の分析から始めて、とりあえず慣れるために、超有名70年代日本曲をやってみている。知ってる曲だから、あまり慣れてなくてもできるし、他調との違いや、同曲異調の記譜についても考察できる。
 この曲は、ある学校の卒業式にグロバがお邪魔したとき、生徒たちが歌うのを聴いて「そーだ、ワークショップで取り上げよう」と思ったのであった。この年代の曲は、実はあまり二胡教本や曲集に掲載されていないが、二胡に合わないわけでは決してなくて、今活躍中の中国人二胡老師の方々の来日が集中した年代を考えると、単に「知らない」というだけだと思う。過去のヒット曲で、現在はラジオのリクエスト番組くらいでしか聴けないこれらの曲を、リアルタイムで聴いていなければ、風格も再現しようがないからではないだろうか。
 それで優越感を感じているわけではなくて「日本における二胡」を考察したときに「もっと沢山良い曲があるよ」と言いたいだけだ。70年代ヒットだけでなく、80年代ニューウエーブや、90年代バンドブームの時の曲にだって、二胡に合う名曲がある。でも、誰でも弾けばいいというものでなく、その曲に惚れ込んで、オリジナルと自己の風格とを合成して弾きこなせる縁者がまず弾き、「そうだー、良い曲だったんだねー」と聴衆や他の二胡好きたちに認識させることが必要だと思う。
 曲によっては、演奏者を選ぶものもあるから。
 余談さておき、この曲のあとは、次は「綉金なにがし」と「瑤族舞曲」に繋がる。
 私事になるが、私の二胡歴には何度かのターニングポイントがあって、「瑤族舞曲」はそのうちの一つにまつわる、とても思い出深い曲である。それは、現在はグロバでもお世話になっている打弦師Kさんたちのバンドと初共演したときの一曲だからだ。この中国曲を、有名なアイリッシュ・バンドがかつて北京を訪問し、中央民族楽団の若い人々と一緒に演奏したというエピソードをはじめ、中国音楽、民族音楽についていろいろ知ったり考えたりするようになったはじめだ。